スポーツ障害を予防することの難しさ Vol.2

前回はvan Mechelen氏の論文を引用し、スポーツ障害予防のための4つのステージについて書きました。

今回はなぜ世の中にプリハブの重要性が浸透してきているにも関わらず、増えてしまうのか。について書きます。

プリハブは大事。それは分かってる。。。

前回も書いた通り、スポーツ障害を予防できるかどうかを検証するさまざまな研究がされています。それらの研究においては、概ねどのプリハブを採用したとしてもスポーツ障害は予防できる!とのことです。

またNATAのPosition Statementにおいても予防の重要性が強調されています。

しかし、現実は厳しいものでオーストラリアの研究では思春期のスポーツ障害(ACL)は年々増えているとの結果が示されています。 オーストラリアは世界的見てもスポーツ科学の研究が進んでおり、スポーツ科学先進国と言えます。そのような国でさえスポーツ障害が増えているという現状です。

なぜか。早稲田大学の広瀬先生は3つの点を指摘してます。

1.コンプライアンス 正しく継続して行う

非常に当たり前の事なんですが、実は難しい。できているようでできていない。現場で仕事をすればこの難しさを痛感します。

まずはコーチの理解が必要不可欠です。チームを強くするために、やらなくてはいけないこと、課題が沢山ある中で、プリハブに割くための15分、20分を捻出してもらえるか。プリハブの重要性と価値をコーチにプレゼンする必要があります。

選手にとっては、ストレス(めんどくさい)です。「パフォーマンス向上させる」という理由ならまだしも、「ケガを予防する」という響きが何となく消極的で、モチベーションが下がってしまうのです。その結果、本来の目的を忘れた「ただ形だけやっている」状態に陥ってしまうのです。

ましてや研究通り(近い)の結果を出そうと思えば内容は単調になり、次第に飽きてきます。「障害を予防する」というのは形に見えづらいのも継続できない理由の一つです。そのため単調にさせないように、且つ効果が変わらないようにバリエーションを変えるのは、ATの腕の見せ所とも言えます。

「飽き」ても同じ種目を黙々と淡々とやり続けられる選手がいるのも事実ですが。

そんな中、昨年すごい論文が発表されました。

「ACL損傷を減少させるための股関節にフォーカスした予防トレーニングの効果」
 12年間の前向き研究

・・・12年間です。途方もない時間です。トレーニングを徹底し、データを取り続けた研究チームにリスペクトです。女性バスケットボール選手のためのプリハブの効果を検証した研究の中では一番信頼のおける研究ではないでしょうか。

大学のバスケットボール部に所属する女子を対象とし、最初の4年間は通常のウォーミングアップをし、その後の8年間はプリハブを入れたウォーミングアップを実施介入しています。

内容はこうゆうのです。(もちろんこれ以外にもあります。)

その結果、実に38%のACL損傷を減少させることができたとのことです。(P=0.017)

なぜそのような結果が出たのか。ACLの損傷メカニズムを研究し、トレーニングを内容を吟味したことも理由に挙げていますが、「正しく継続して行う」ことができたことが、障害を予防できた理由の一つであると指摘しています。8年も続ければ、それはもはやチームの習慣。そろそろ伝統。そのうち文化の域ですね。すごい。

現場で選手のテンションが下がらないよう盛り上げているトレーナーの姿が目に浮かびます。「さあ!元気出していこう!」「ケツに効いてる!?」「コア意識して!」・・・現場、やっぱりいいね。

2.包括的な取り組み

障害を予防する為にできることはプリハブだけではありません。内的要因(肉体的・精神的疲労、技術の未熟さ)や外的要因(天候、トレーニング環境、強度)の改善により、達成されるものです。

よって、AT一人では到底達成できません。

現場で何ができるのか一歩先回りして改善策を考える。普段から他のスタッフとコミュニケーションを取り相談しやすい環境、地ならしをするのもATの仕事の一つです。

3.アスレチックトレーナーの指導

広瀬先生の3つ目の指摘として挙げておられたのが、これ。

AT一人では達成できない。でも、誰かが周りをまとめなくてはいけない。巻き込まないといけない。

つまり、ATとしての自覚。またアイデンティティの確立。と私は捉えました。

「誰が予防するの?」「ATでしょ」

「なぜ予防できなかったの?」「ATのせいでしょ」

気の引き締まる思いです。

引用文献

Cynthia R. LaBella, M. M. R. H., MEd, ATC; Joe Grissom, MPP; Kwang-Youn Kim, PhD; Jie Peng, MS; Katherine Kaufer Christoffel, MD, MPH (2011). “Effect of Neuromuscular Warm-up on Injuries in Female Soccer and Basketball Athletes in Urban Public High Schools.” Arch pediatr adolesc medicine 165.

Sugimoto, D., et al. (2015). “Specific exercise effects of preventive neuromuscular training intervention on anterior cruciate ligament injury risk reduction in young females: meta-analysis and subgroup analysis.” Br J Sports Med 49(5): 282-289.

Padua, D. A., et al. (2018). “National Athletic Trainers’ Association Position Statement: Prevention of Anterior Cruciate Ligament Injury.” J Athl Train 53(1): 5-19.

Omi, Y., et al. (2018). “Effect of Hip-Focused Injury Prevention Training for Anterior Cruciate Ligament Injury Reduction in Female Basketball Players: A 12-Year Prospective Intervention Study.” Am J Sports Med 46(4): 852-861

広瀬先生ゼミHP 広瀬統一研究室 

一日一新

・鈴鹿8時間耐久レース始まってます。今年はMusashi Harc-Pro様をサポートさせてもらいます。練習では連続で転倒してハラハラ。本番は転倒なしでお願いします!
・チェコ人とスペイン人のライダー。外国人と絡むのは楽しい。

今日の子供日記

・23日は長女の6歳の誕生日でした。おめでとう。すっかりお姉ちゃんです。
・長男との電話、会話になってて感動です。「お姉ちゃんは?」「下にいる」「新幹線乗ろうね」「うん。お母さんは?」
・次女もうつ伏せから頭を持ち上げられる様になりました。

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