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スプリントモーメンタムという考え方

今月のNSCAの月刊誌で興味深い事例報告が出されました。

第一著者は九鬼颯太さん。日本のトップスプリンター九鬼巧さんのお兄さんで本人もスプリンターだった方です。僕はもともとブログの「九鬼家のダッシュ」の大ファンだったこともあり、「お!これは面白そうだ」と食いつきました。

九鬼家のダッシュ ←九鬼兄弟のブログです

概要

学生ラグビー選手21名に対して2年間の筋力・スプリントトレーニングを施し、体力的要素の変化を見た研究です。その際のスプリントタイムスプリントモーメンタムの増加率に及ぼす要因を検討しています。

スプリントモーメンタム?初めて聞く単語でした。ご説明します。

スプリントモーメンタムとは?

近年ではラグビーのコンタクトプレーに重要とされる、体重とスプリント能力を組み合わせたスプリントモーメンタムを用いた選手の評価法が提案されている。

体重×スプリントの速度

で算出されコンタクトプレーのパフォーマンスを体力的側面から評価する指標として有効である。とのこと。

つまり、「体重そのままでスプリントのスピードを上げる」か「体重を上げてスプリントのスピードを維持する」「両方上げる」ことでスプリントモーメンタムが向上する!ということになります。

身体のバカでかいやつがものすごいスピードでぶつかってくるのを想像してください。軽い交通事故です。

余談ですが、僕は大学1年生の時ラグビー部に1年間所属しました。高校の時に陸上短距離走をしていたのでそこそこ足の速さには自信があり、大学では新しいことをやってみたい、足の速さを活かせそうなスポーツとしてラグビーを選びましたが、毎日交通事故に遭っている気持ちになり1年で退部しました。余談です。

結果から言うと、スプリントモーメンタム向上!という結果になりました。

方法

細かな方法は実際の論文を参考にしていただくとして、ここでは簡単に。

トレーニング計画としてプレシーズン、一般的準備期、専門的準備期、前試合期、試合期、移行期を設定。

筋力トレーニングはプレシーズン期は週4回。シーズン期は週2回実施。筋肥大→最大筋力→パワーと移行。

スプリントトレーニングはプレシーズン期に週2回、20分程度。シーズン期はW-upと主たる練習の間のトレーニングとして週3回、10分間のセッションとして実施。

ここでは実際のスプリントトレーニングについてまとめます。

スプリントトレーニング

内容

①各種アクティベーションエクササイズ

②マーカーを用いたスプリント走

トレーニングのねらい

股関節周りと体幹の筋を割賦させることで、直後のスプリントにおいて股関節の力発揮や体幹の安定を促進させる

アクティベーションエクササイズは以下の4つから2~4つのエクササイズを選択し実施。

アクティベーション① 5・10kgプレートを用いたエクササイズ

ステップアップ

フロントランジ

片脚スクワット

上もも上げドリル


アクティベーション② WB用いたエクササイズ

スナッチ

ジャーク

スクワットジャンプ

スプリットジャンプ


アクティベーション③ ハードルを用いたエクササイズ

ハードルまたぎ

ハードルくぐり

ハードルジャンプ


アクティベーション④ チューブを用いたエクササイズ

サイドステップ

その場ジャンプ

もも上げ

前方への連続ジャンプ


マーカーを用いたスプリント走

全力疾走

体幹を90度横方向に捻った姿勢での前方方向への全力疾走

両手を高く上げた姿勢での全力疾走

スプリントの途中でボールキャッチを行いながらの全力疾走

スプリントの途中でボールパスを行いながら全力疾走

スプリントをペアとシンクロさせながら全力疾走

インストラクション

ランニングフォームの注意点としてBosch(2010)の指導法を参考に

「つま先を進行方向に向け、地面を上から捉える」

と指導したそうです。これはスプリント中のパウイング動作を強調する目的で行われています。パウイング動作に関しては以前書きましたのでご参考下さい。

まとめ

今回の事例報告を読んでスプリントモーメンタムという言葉を学びました。

「考察」もスプリントモーメンタムの向上に何が影響を及ぼしたのか、SQ1RMやCMJなんかの関係性を統計的手法で検証されておりとても面白いです。

本来であれば「方法」や「結果」を細かく検証したうえで研究内容を現場で活用していきますが、それは実際の論文を各自でお読みいただいて検証いただければと思います。ここでは割愛させていただきます。

この実験の素晴らしいと思うのは現場で2年間の間、無理なく普段の練習に組み込ませ、なおかつ結果を出していること。

このような長期の縦断的研究は実施が難しいためとても貴重です。指導者は現場と科学の橋渡し役として科学的な知見を常にアップデートし活用していかないといけないなと思います。

引用文献


九鬼颯太, 明石光史,竹澤健介, 矢野広明, 山本巧, 谷川聡, 千葉剛, 2年間の継続的なトレーニングが身体組成、筋力、スプリントおよびスプリントモーメンタムに及ぼす影響:学生ラグビー選手における事例, S&C J Japan, 27, 3, 10-21,2020.

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