COVID-19の感染拡大により数か月にわたりスポーツ活動は制限されてきました。一般の人においてもアスリートにとっても場所や時間などの制約を受けながら「できる範囲」でのトレーニングをしてきたものと思います。ほとんど身体を動かすことがなかった人もいるかと思います。
7月ごろからフィットネスクラブにも会員さんが戻ってきており、安心しているところですが、長期間運動していない期間がある人が急に激しい運動をすると様々なリスクが高まります。
NSCAがCSCCaと合同で「不活動後の移行期にトレーニングに安全に復帰するための総合ガイドライン」を紹介していますので共有します。
Contents
アメリカの現状
まず前提としてなぜこのようなガイドラインが作られたかお話しします。
スポーツの現場では事故が起こる場合、選手の接触による外傷性の事故と非接触性の事故に分かれます。
非接触性の事故で特に致命的になりうる症状は心臓突然死、労作性熱射病および、労作性横紋筋融解症の3つとしています。
非接触性障害の事故はこの10年で増加傾向にあり、過去20年でいうと35名の死者が出ています。
その様な背景から各協会は改善すべき案件と捉え、ガイドラインを作ることとなりました。
序論概要
- S&Cセッションは過剰な努力を必要としないように適切に計画しなければならない。
- 事故は不活動時期(学生の休暇後)などに有意に増加する
- コンディショニング期間を設け、期間中のトレーニング負荷段階的に漸進していかなくてはならない。
- 大学1年生はさらに事故のリスクが高い集団である。
- トレーニング量が「多ければ多いほど良い」という気構えの選手は注意
トレーニング参加前の医学的調査と緊急時行動計画の策定の重要性
- 選手の既往歴など医学的調査を徹底的に行う
- 緊急時行動計画を作り実行する事
上記2つは当たり前と思われるが、事故が起きている事例は徹底できていないことがほとんどであり、そのような事例は本来予防可能だったはずのものが多い。
NATAとNSCAによる労作性熱中症を予防するための推奨事項
- アスリートはEHIの貴家任司またはEHIの既往歴があるアスリートを特定するために、医師の事前検査を受ける
- EHIの既往歴があるかEHIの危険性の高いアスリートは、特に綿密にモニタリングする。
- アスリートは自分の水分補給状態をモニタリングし、運動の前後および運動中に必ず水分を補給する。
- アスリートは、涼しい環境で毎晩少なくとも 7 時間の睡眠をとり、バランスのとれた食事をとる。
- アスリートは、脱水効果のあるサプリメントやその他の物質を使用しない。
- アスリートは、7 ~ 14 日間かけて徐々に暑熱に順応させる。プレシーズンの練習のうち、最初の 2 ~ 3 週間が最も危険性が高いことを認識し、この間は可能な限りあらゆる予防策を講じる。
- 計画的に休息をとり、運動-休息比を環境状態と練習セッションの強度に合わせて変更する。
- 高温多湿環境に対する規定のガイドラインに従い、活動の種類と湿球黒球温度に基づく暑熱順応方針を策定する。高ストレス環境での練習セッションは、時間を遅らせたり短くしたり、または延期する。
- スポーツ医療スタッフは、EHIの徴候と症状の予防と認識について、コーチとアスリートを教育する。また、コーチングスタッフとサポートスタッフは、トレーニングや練習を行なうそれぞれの場所や試合の会場に適した特別な緊急時行動計画(EAP)を検討し予行演習を実施する。
- EHIが疑われるアスリートを直ちに冷却できるように、冷水または氷の浴槽とアイスタオルを常に用意しておく。EHI、特に熱射病に対処するためには、速やかな全身冷却がきわめて重要である。
- EHIのアスリートの深部温を把握するために直腸温を測ることは、臨床的な鉄則である。他のいかなる体温測定(口内温、鼓膜温、前額温)も有効ではない。
- 認定アスレティックトレーナーは、EHIの徴候または症状を呈するアスリートに対する医療介護の主要な提供者であり、EHIが疑われるアスリートの参加を制限する権限を有する。
知っておきたいこと
鎌状赤血球形質のアスリートは、EHS、虚脱、突然死の危険性が高い。鎌状赤血球遺伝子を持つのは祖先がマラリア感染が多い地域の出身である。白色人種のアメリカ人で10000人に1人に対し、アフリカ系アメリカ人では12人に1と極めて多い。
50/30/20/10ルールとは
不活動期間後2週間の50/30/20/10ルールを忠実に守り、量や作業負荷を低減するコンディショニングドリルを処方することを推奨しています。
このルールは、コンディショニングメニュー(ランニングなどの基礎体力運動)の最初の週を最大レベルの負荷の50%から開始し、その後30%、20%、10%とコントロールするルールです。新入生アスリート、または労作性横紋筋融解症、労作性熱射病から復帰するアスリートに対しては2週間ではなく、4週間かけて負荷を漸進させることを推奨しています。
ウエイトトレーニングのためのFITルールとは
ウエイトトレーニングに関しても不活動後はコントロールすることを推奨しています。その中でFITルールというものがありますが、重度の筋損傷を最小限にするために筋力トレーニングの「頻度」「負荷」「レスト」をコントロールしています。負荷に関してはIRVという、計算により出された数値でコントロールしています。
IRVの計算式は
セット数×レップ数×%1RM(少数)=IRV単位
です。
ガイドラインでは不活動期間直後の2週間は30より大きなIRVは避けるべきであると述べられています。
まとめ
アメリカのエビデンスを元にしたガイドラインの作成能力にはいつも驚かされます。「臨機応変に」や「空気を読んで」と曖昧にせずに、個人や企業レベルでもデータを非常に重要視している印象を持っています。幼少期からそのような教育を受けているからです。 数字という根拠を元に論理的にルールを構築する姿勢は見習うべき点が多いです。
非接触性の事故が起こるケースは「まわりに追いつきたい」「遅れを取り戻したい」「周りと差をつけたい」「選手を追い込ませたい」など焦りから来ることが多いようです。指導する立場の人間はトレーニングに関するリスクを考えたうえで負荷設定を考える必要があります。体力がつくスピードを追い越してトレーニングの負荷が上がることが無いように現場の指導者は気を付けるべきかと思います。
一日一新
・ネットをNUROに変更しようと思い、申請。実際に家をチェックしてもらい導入できるかどうか判断する模様。
子供日記
長女:ブレボーで転倒。頭を打ちましたが脳震盪はなさそう。
長男:いつのまにか顔面に青地が。転んだり木登りしたりで体中傷だらけです。
次女:今日は一日機嫌が良かったです。言葉を話すのが遅いのは上の二人と比較してかまってあげられる時間が少ないからかなと思っています。今日は絵本で遊びました。
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