トレーニングの3つの原理

①過負荷の原理

日常生活動作はほとんどの場合30%以下の筋力で行っていると言われています。しかし、筋肉を刺激して筋力を向上させるためには最大筋力の60%以上の負荷を与える必要があります。日常生活の中では筋力を向上させることは難しいし、それは実感として理解しやすいと思います。

この原理で重要なのは身体は適応、順化というプロセスを踏んで同じ負荷の上では向上しなくなるという点です。よくフィットネスクラブでマシントレーニングしている会員さんを見ますが、5年、10年同じ負荷でやっているという話を聞きます。これはもはやトレーニングではなく運動です。ADL、パフォーマンスを向上させたい人にとって、身体はとっくに順化しているのに同じ負荷で行うメリットはほとんどありません。ただし、今の体力を維持したいという目的であれば意味があるでしょう。何もしていないと毎年数%筋力が落ちるといわれている高齢者にとってはそれはそれで重要なトレーニングと言えるかもしれません。

過負荷を与えるためには変数を言われる数値を変更させる方法があります。目的に合わせて色々なバリエーションがありますが、詳しくは漸進性の原則で説明したいと思います。

②特異性の原理(SAID)

Specific Adaptation Imposed DemandでSAIDの原理と呼ばれています。直訳すると「課せられた刺激に対する特異的な適応」となるのですが、現場でよく用いられる意味としては「スポーツの動きに特異的なトレーニングをする」という意味で使われます。短距離走の選手にダッシュのメニューをさせる、ウエイトリフティングの種目を行うのは特異性の原理にかなっていると言えます。しかし、距離の長いジョギングやバランスボールの上に立って30秒キープする、などは全く無駄ではないですが、特異性の原理の上では優先順位は低いかもしれません。

種目の特異性を明らかにするためには選手・コーチからのニーズや種目の特性などを分析し絞り込んでいく作業が必要になります。

③可逆性の原理

トレーニング期間が長いほどトレーニングをやめたときの効果は持続する。逆に、トレーニング期間が短いほどトレーニングをやめたときの効果は早くなくなることが分かっています。オリンピックでメダルを目指すアスリートによくみられるのは、オリンピックが終わると長期休養に入り、オリンピックイヤーやその前年から急に調子を上げる選手です。それまで積み上げてきたトレーニングの量が多いため、長期間休んだとしてもオリンピックにきっちり調子を合わせることができます。

また、オフシーズンのみウエイトトレーニングをする野球選手やサッカー選手などにも当てはまります。オフシーズンにウエイトトレーニングをしっかり積み、高い筋力を維持できていてもシーズン後半になるとパフォーマンスが下がってしまうのは典型的な例です。パフォーマンス維持のために週1回はウエイトトレーニングを続ける必要があります

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